未経験者から船員になることは可能?船員への転職・就職情報まとめ

未経験から船員への転職は可能?
船員に未経験からなる方法が知りたい!

こういった疑問を解決する記事となっています。

本記事の内容
・未経験から船員になる方法
・未経験から船員になるには転職もあり
・船員になるには船の仕事を知ろう
・船員になるメリット・デメリット

・船員からのキャリアパスについて

イルカ

この記事を書いている私は、海技免状を保有するもと海上職です。

今回の記事は、未経験者から船員になる方法がテーマです。

内航海運に限らず海の業界は人不足です。このため「興味はあっても未経験だから」と臆することなく、未経験者からの船乗りデビューは十分に可能です。

本記事を最後まで読むことで、未経験から船員になる方法だけでなく給与やメリット・デメリットについても把握することができますので、ぜひ最後までご覧ください。

ではさっそく「未経験から船員になる方法」について、お話していきます。

未経験から船員になる方法

未経験から船員になる方法

未経験から船員になる方法には、大きく2つあります。

未経験から船員になる方法
  1. 国家資格を取得→就職:
    オフィサー(職員)を目指す場合
  2. いきなり就職:
    部員(クルー)として働く場合

※オフィサーとは、船長を頂点にもつ船のピラミッド組織における上位職です。部員から叩き上げでオフィサーになる方もいます。

参考までに、「船員」については船員法第1条では以下のように規定されています。

日本船舶又は日本船舶以外の国土交通省令で定める船舶に乗り組む船長及び会員並びに予備船員をいう。

e-Gov電子政府の総合窓口「船員法」

未経験からオフィサーを目指す場合

船にオフィサーとして乗り組むためには、国家資格である「海技免状」が必要となります。プレジャーボートで使用する小型船舶免状とは別資格です。

オフィサーに必要な免状
  • 外航船員:3級以上
  • 内航船員:4級以上

海技免状の受験資格は、次のとおりです。

海技士国家試験の受験資格
  • 18歳以上
  • 一定の乗船履歴(学校での実習履歴、一般船の運航に従事した経歴)

免状取得のための教育機関には、以下のようなものがあります。

未経験から部員を目指す場合

部員として働くには国家資格は不要です。このため未経験からでも就職してスグ働くことができます

求人は運輸局や運輸支局の船員職業安定所で見つけることが可能です

部員として乗船履歴を積んでいくことにより、海技士国家試験の受験資格を得ることもできます

このため急ぎ船員になりたい場合は、部員がおススメです。オフィサーを叩き上げで目指すことも可能です。

少しでも学んでから、就職したい場合には、民間の船員養成所である尾道海技学院などがあります。6カ月と短期間で6級海技士免状を取得可能です。

イルカ

下記のサイトから船員の仕事を探すことができます。

海のハローワーク
船員求人情報ネット

未経験から船員になるには転職もあり

未経験から船員になるには転職もあり

未経験から船員になるには、転職して船員になるという方法もあります。

船員への転職に有利な資格・職務経験

IT系資格保有者が有利になると考えています。

なぜなら、インターネットの海上への普及により、船上のIT機器を保守・運用・管理できる人が不足しているためです。
また自動運航船や港湾の自動化も進んでおり、これまで以上にIT系に精通していることが強みになると思います。

実際に、私はITパスポート・基本情報技術者・応用情報技術者を取得したことでキャリアパスが広がりました。

この他、責任感忍耐力相互信頼がアピールできればポイントとなります。

これは船上においては24時間休みなく一緒に仲間と働き続ける必要があるからです。

イルカ

私は寡黙にコツコツと働いていましたが、上の3つは大切にしてきました。それが転職に活きたと信じています。

この他、家族の理解があることもアピールできます。

なぜなら船は家族のイベント(冠婚葬祭)に参加できない可能性があるからです。どこの面接に行っても必ず「親の死に目に会えない可能性がありますが大丈夫ですか?」と聞かれました。

未経験から船乗りになるためには

オフィサーになるには、海技免状が必要
部員なら、就職できればすぐになれる

船員になるには船の仕事を知ろう

船員になるには船の仕事を知ろう

これから船員を目指す方向けに仕事内容を解説します。

船員の仕事内容

船の仕事は大きく次の2部門があります。

船のメイン2部門
  • 船を安全に計画通りに操船運航する:
    甲板部
  • 船のエンジン等の船内機器の保守・運用・管理:
    機関部

そして数の組織において業務を分担しています。

※無線部の他、事務部(司厨部)といった部門のある船/ない船があります。

※船によっては、陸上や多船舶との通信を行う無線部、出入港手続き・船内での調理・客船などでの乗客サービスを行う事務部がある場合もあります。

乗り組む船員の資格と人数は、船のトン数、エンジン出力や航行する区域によって法律で決められています。

一般的に、3つのグループにわかれて、4時間シフトを1日に2回おこないます。

  • グループ① 00:00-04:00、12:00-16:00
  • グループ② 04:00-08:00、16:00-20:00
  • グループ③ 08:00-12:00、20:00-24:00

乗船中は休日がなく下船後にまとめて取得します。4か月の乗船の後に2か月休みなど、いろいろなスタイルがあり、フェリーやタグボートでは陸上職のような休暇形式の場合もあります。

イルカ

いろいろな休暇形式を経験しましたが、陸上職には無い長期休暇は、船乗りの大きな魅力の一つです。

船員の労働時間

船員法において、1日14時間・週72時間の上限が設けられています。

ただし「船舶の航海の安全を確保するため臨時の必要があるとき」(第64条1項)については、その性質上上限がありません。

船員の給与

船員の給与については、国土交通大臣が決定する全国を適用区域とする業種、地方運輸局長が決定するその管轄区域を適用区域とする業種ごとに「最低賃金」が決められています。

国土交通大臣決定全国内航鋼船運航業最低賃金
海上旅客運送業最低賃金
漁業(遠洋まぐろ)最低賃金
漁業(大型いかつり)最低賃金
地方運輸局長決定内航鋼船運航業及び木船運航業最低賃金
海上旅客運送業最低賃金
漁業(沖合底びき網)最低賃金
漁業(大中型まき網)最低賃金
地方運輸局ウェブサイトより

参考までにこの記事アップデート時点(2020年1月17日発効)の全国適用の最低賃金は下記のとおり。

適用する船舶職種最低賃金月額
内航鋼船運航業及び
木船運航業
(サルベージ業に従事する
船舶を除く。)
鋼船(次に掲げるものを除く)
①平水区域を航行する鋼船
②沿海区域を航行する総トン数
100トン未満の鋼船
③鋼製はしけ
・職員
・若年職員
・部員(経歴3年以上)
・部員(経歴3年未満)
・249,550円
・233,100円
・190,950円
・181,650円
海上旅客運送業
①遠洋及び近海区域を航行する
船舶
②沿海区域を航行する総トン数
100トン以上の船舶
(その航行区域が平水区域から
当該船舶の最大出力で2時間
以内に往復できる区域に
限定されている船舶を除く。)
・職員
・事務部職員
・部員
・246,450円
・192,350円
・185,000円
遠洋まぐろ漁業
遠洋まぐろ漁業の用に供する漁船
1人歩船員199,300円
大型いか釣り漁業
大型いかつり漁業の用に供する漁船
1人歩船員203,300円
地方運輸局ウェブサイトより
船長

一般的な海上職員で年収500~800万円、船長になると1000万円を超えます。乗船期間中の食費や作業着等は法律で会社支給となっており、陸の仕事と比較すると手元に残るお金はもっと多くなります。

船員保険

船員は、陸上のビジネスパーソンと違い、「船員保険」に加入しています。

船員又は、協会けんぽが運営の主体です。被扶養者の職務外の疾病や負傷、または死亡や出産に対して保険が給付されます。

基本的に会社員の健康保険と船員保険は同じ内容です。

しかし傷病手当金は、一般的な健康保険では連続で3日間の待期期間があるのに対し、船員は労務につけなくなった初日から給付があります。また給付期間は健康保険の1年6カ月の約2倍、3か月となっています

船員保険被保険者と扶養者は、一般社団法人船員保険会が運営する船員健康管理センターで健康診断を受けます。

参考)船舶保険における「船舶保有者」とは、船舶における労務の提供を受けるために船員を使用する人のこと。必ずしも船舶の実際の所有者というわけでないです。

船員の仕事の将来性

船員の仕事の将来性

日本人船員は、今後も一定数以上の需要が見込める職業です。

日本人船員の数(予備船員含む)は、1974年に約2.8万人のピークとなり、その後は減少傾向にあります。

出典:国土交通省ホームページ

ただし、

  • 日本の99%以上の貿易量を担う海運
  • ますます進む環境に配慮した国内物流を支える内航船
  • 日々の食卓を支える水産業
  • 未知の世界を探求する海洋科学
  • 海洋資源の活用
  • 海上風力発電の建設 など

今後も一定以上の需要が見込まれます。

人件費の安い外国人雇用およびAIによる自動運転船の開発が進んでおり、船員に求められるスキルは変わっていくことが予想されます。

有事の際に島国日本の社会生活を保つため、どれだけAIが普及したとしても一定割合の日本人船員は生き残っていくと考えています。

イルカ

実際、私はその目的で国交省が取り組んでいる「外交日本人外航船員確保・育成スキーム」に参加していました。

ポイント

操船の仕事は甲板部
機器の整備は機関部
今後求められるスキルは変わっていく

船員になるメリット・デメリット

船員になるメリット・デメリット

私が海上職を15年近くしてきて感じたメリット・デメリットには、次のようなものがあります。

未経験から船員になるメリット

船乗りのメリットについて

  • お金の浪費を防げる
    船上ではネットが遅いため、商品をダウンロードできません。また、海上にいるため注文品を受け取ることもできません。このため、結果としてお金の浪費を防ぐことができます
  • 手元に残る給料が多い
    乗船中は手当てがつき、食事代や作業着が法律で会社支給となっているため、想像以上に手元にお金が残ります。これは陸の仕事に転職する毎に強く感じました。
    →この2つの理由から、海外MBA取得や不動産投資のための資金を、船で貯めることができました。
  • 通勤時間ほぼゼロ
    ベッドと勤務場所が近く、数分で移動可能です。通勤電車が苦手な方にとっては最高の環境です。
  • 自然を満喫できる
    大海原では、どこを見渡しても海!しかも刻一刻と表情を変える雲や波の表情、遮るもののない空や星空を堪能できます。時には鳥やイルカ、クジラ、魚などが表れて楽しませてくれます。荒天のときも、それはそれで自然の雄大さ・偉大さを感じることができる機会となります。都会とは空の広さも違います。
  • 長期休暇がとれる
    数週間~数か月のまとまった連続休暇をとることができます。このため、祝祭日だけでは難しい資格取得などに腰を据えて取り組むことも可能ですし、長期間の海外旅行に行くことも可能です。
    →私は応用情報技術者の資格を取得したり、チベットやネパールに旅行に行ったりしていました。
  • 深い人間関係が築ける
    運命共同体として乗船する船乗りは、陸上で仕事をする場合と比べると、短期間で深い信頼関係を結ぶことができます
    →私は口数の少ない方なのですが、船で出会った人間関係が、フリーランスとなった今も続いています。

次に船乗りのデメリットについてご紹介します。

船員のデメリット

  • 陸の期間が限られている
    冠婚葬祭や引っ越しなどに立ち会えないことが多くなります。このため陸にいる間に準備を進めておくことが思いのほか多くあります
  • ネット環境がよくない
    携帯電波の届かない海域では、衛星を介したインターネット通信を使用することになりますが、よく途絶します。このため、家族との連絡などに不便さを感じることがあります
    →休憩時間に短期トレードなどの投資手法に取り組みたい方には不向きな環境です。
  • 危険がともなう
    重量物、高張力、高所、閉所といった作業を揺れる環境で行う必要があります。また周りは全て底なしの海のため、落水には常に注意する必要があります。
  • 人間関係が濃い
    船という閉鎖環境で、長時間顔をつきあわせるため、人間関係は非常に濃いものになります。
  • 長期間の乗船がある
    乗船期間中は、基本的に休日なく連続勤務となります。常に心身の健康維持に努めておくことは必須です。
  • 船酔い
    陸では経験することの無い揺れで、船酔いに苦しむ人もいます。対策については次の記事にまとめていますので併せてチェックしてみてください。

船員からのキャリアパスについて

船員からのキャリアパスについて

転職することが普通となった今、未経験から船員となった後のキャリアパスも以前よりは広がりが見られます。

船員から船員への転職は、船員職業安定所で見つけることができます。

陸への転職は、海の現場を知っていることを活かした港湾や海洋コンサル、海運業の営業などが考えられます。

海の他業種への転職としては、海洋科学調査の技術者、海上保安官、海上自衛官などがあります。

イルカ

求人情報・転職サイトdodaでは、海に関連する仕事も取り扱っており、陸と海を行き来するキャリアパスの相談に乗ってもらうことができます。

dodaの無料転職支援サービスには下記URLから登録できます。

転職で、サイトに掲載されていない【非公開求人】を活用する方法とは?

船員辞職に関連した次の記事もご参考になさってください。

未経験から船員に無事なれますように

未経験から船員になる方法、そして船員の仕事についてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?

今回の内容
  • オフィサーになるには海技免状が必要
  • 部員なら就職できればすぐになれる
  • 今後は操船、機器の整備以外のスキルも求められていく
  • 船員となった後のキャリアパスもある

船員は島国である日本になくてはならない大事な仕事です。

乗組員として働くためには、国土交通大臣が指定する意思による健康検査に合格する必要があるので、日々の健康に留意してお過ごしください。

無事に船乗りとなれることを心より願っています。