
マイクロプラスチック海洋汚染の問題って?
こんな疑問に答える記事となっています。
✅本記事の内容
・マイクロプラスチック海洋汚染の問題とは
・プラスチックごみ問題への対策
・マイクロプラスチック海洋汚染対策は海辺のごみ拾いからでも可能

この記事を書いている私は、フリーランスの海洋技術者です。
プラスチックのストローが刺さったウミガメが、血と涙を流しているYouTube動画を見た方も多いのではないでしょうか?
マイクロプラスチック定義としては、適切に処理されずに海に流れ出てしまったプラスチックのうち5mm以下の粒子となったもののことを指します。
今回は海洋マイクロプラスチックの問題と対策について、ご紹介していきます。
マイクロプラスチック海洋汚染の問題とは

マイクロプラスチックの海における問題には、大きく3つあります。生物への影響、気候変動への影響、そして原料である海洋プラスチックごみの問題です。
- 生物への影響
- 気候変動への影響
- 海洋プラスチックごみの問題
順に見ていきます。
マイクロプラスチック海洋汚染①:生物への影響
1つ目は、生物への影響です。
海洋生物への影響
現段階において、海の動植物の身体や繁殖などに、具体的にどのような影響があるのか、詳しいことはまだ明らかにされていません。
ただ、下記の点から海洋中のマイクロプラスチックをエサと誤って体内に取り込む海洋生物への影響が懸念されています。
- プラスチックの性能を向上させるための複数の添加剤を含む
- その中には生殖機能などに影響を与えるものもある
- さらに海中の有害物質を吸着する性質を持つ
サンゴでは、共生関係にある褐虫藻(かっちゅうそう)がマイクロプラスチックの取り込みにより減り共生関係が崩れると報告されています。
人体への影響
小魚などが誤飲したマイクロプラスチックは、捕食者の大きい魚に蓄積されていき、最終的には、食物連鎖の上位にいる人間に濃縮された形で取り込まれる可能性もあります。
動物実験では、微細な粒子が内臓に蓄積された後、血流やリンパ系、肝臓まで入り込み、臓器や腸、ホルモン調節などに有害な結果をもたらす可能性が分かってきています。
水道やペットボトルの水、大気からもマイクロプラスチックは見つかっており、人間の体に対しても、どのような影響があるのかについて、世界中で研究が続いています。

WWF(世界自然保護基金)の委託で豪ニューカッスル大学などが行った研究では、驚いたことに人は毎週クレジットカード1枚分に相当する5gのマイクロプラスチックを摂取している可能性があるそうです。
マイクロプラスチック海洋汚染②:気候変動への影響
2つ目は、気候変動への影響です。
ハワイ大学の研究結果によると、海のプラスチックごみが紫外線や波のエネルギーによって劣化する段階で、主にメタンガス(温室効果ガス)を放出することが分かっており、気候変動問題への影響についても懸念されています。
そもそも、プラスチックは石油使用量の8%を占め、また当然のことながらプラスチックを作る時にもエネルギーを必要とするため、その生成の段階から気候変動への影響が大きい物質です。
地球は1つのシステムであり、大気海洋の相互作用により気候変動はそのまま海洋システムにも大きく影響します。温暖化による海面の上昇、海洋大循環の停止による影響などが、また大気に影響を与えます。
ホットハウス・アース
2018年に発表された国際研究「ホットハウス・アース(灼熱地球)」という科学理論では、地球の平均気温が産業革命前と比べて1.5度を超えてさらに上昇していくと、地球のシステム全体にとって取り返しのつかない状況に陥るといいます。
マイクロプラスチック海洋汚染③:海洋プラスチックごみの問題
3つ目は、海洋プラスチックごみ問題です。
次の動国連による「プラスチックの海」という動画をご覧になってみてください。
海において生成されるマイクロプラスチックの原料となる海洋プラスチックごみにより、クジラやウミガメ、海鳥などが傷ついたり死んだりしています。
世界からの海洋プラスチックごみ
海洋プラスチックごみの主な発生源は、東・東南アジアに集中しており、それらの地域では流出経路などに関する科学的な知見が未だ不足しています。
世界のプラスチック生産量は、年間4億トン。そのうち世界の海には毎年910万トンものプラスチックごみが流出しています。このまま増え続ければ、2050年には海洋プラスチックごみの重量が、魚の重量を超えるといわれています。
その海への流出の一因となっているのが、先進国が上記の地域に輸出している廃プラスチックです。現地では汚れなどの理由により有効活用されずに廃棄プラスチックが野積みされており、そこから陸や海の汚染が続いています。
日本からの廃棄プラスチック
日本も年間900万トン発生する廃棄プラスチックのうち国内で処理しきれない100万トン以上を「リサイクル向け資源」として海外へ輸出してきています。
※日本が、半量以上を輸出していた中国が2017年末に輸入を原則禁止した後は、タイやマレーシア、ベトナム、台湾などへの輸出量を増やしてきましたが、今ではこれらの国々でも輸入禁止や基準の厳格化が進んでいます。

海洋プラスチックごみは、景観にも影響します。このため海に関連する観光産業への影響も懸念されています。
他の5種には、生産の際に着色料や可塑剤が入れられるためリサイクルできません。
また、リサイクル可能な種類のプラスティックであっても、ほとんどは食べ物や油で汚れているので、厳しい品質を求めるリサイクル市場では拒絶されてしまう状態が続いています。
2019年にスイス・ジュネーブで、有害廃棄物の国境を越えた移動を規制する「バーゼル条約」の締約国会議が開催され、2021年以降、リサイクルが難しい廃プラスチックは、受入国の同意なしには輸出できなくなります。
マイクロプラスチック海洋汚染への対策

マイクロプラスチックは次の2種に分類されており対策可能なのは後者となります。
- 一次マイクロプラスチック
- 二次マイクロプラスチック
一次マイクロプラスチック
歯磨き粉や洗顔料に含まれているマイクロビーズやスクラブなど、マイクロサイズで製造されたプラスチックのことを、一時マイクロプラスチックといいます。
一次マイクロプラスチックは排水を通じて自然環境中に流れ出してしまい回収は困難です。
二次マイクロプラスチック
ペットボトルやビニール袋などの大きなサイズのプラスチックが自然環境中で破砕されてマイクロサイズに細分化されたものを、二次マイクロプラスチックといいます。
二次マイクロプラスチックは細分化されてしまう前に回収したり、廃棄管理やリサイクルなどの対策が可能です。
このため、ここからは二次マイクロプラスチック問題に対する取り組みをご紹介していきます。
マイクロプラスチック海洋汚染対策:3R+Renewable
海洋プラスチックごみの問題を解決する基本は、いわゆる3R+Renewableです。
- Reduce:出すゴミの総量を減らす
- Reuse:再利用する
- Recycle:再生産に回す
- Renewable:代替品の開発と普及
具体的な対策としては次のようなものがあります。
プラスチック関連企業
企業の取り組みとしては、2019年にプラスチック関連企業による「廃棄プラスチックをなくす国際アライアンス」が設立。このアライアンスでは廃棄プラスチックを減らし、循環型社会の実現に向けて支援を続けていくとしています。
アパレル・ファッション業界
アパレル・ファッション業界は、石油業界に次いで2番目に温室効果ガスを排出しているといわれますが、廃ペットボトルを使用したジャケットなどさまざまな取り組みが始まっています。
その他
世界400以上の大企業が「2025年までにプラスチックごみをなくす」共同宣言に署名をしています。
国レベルでもヨーロッパを中心に、プラスチック問題への政治的な対応が進んでいます。
日本政府
環境省ホームページより抜粋すると「プラスチック資源循環戦略」として下記の取り組みが行われています。
プラスチックに関して:
- レジ袋有料化義務化などの使用削減
- 石油由来プラスチックの代替品開発とその利用促進
- 分別回収やリサイクルの効果的方法への取組み
- 公正で最適なリサイクルシステム構築など
海洋プラスチックに関して:
- ポイ捨てや不法投棄の撲滅
- 適正処理
- 海洋ごみの実態把握
- 海岸漂着物などの実態回収処理など
マイクロプラスチック海洋汚染対策は海辺のごみ拾いからでも可能
マイクロプラスチックの海における影響として、生物への影響、気候変動への影響、そして海洋プラスチックごみについてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?

2019年のG20で「海洋プラスチックごみによる新たな汚染を2050年までにゼロとする」という大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを掲げています。しかし今後30年でプラスチックを全く使わない生活に移行するためには、国や企業に任せっきりにするのではなく、各人が海にプラスチックを流さないという意識が重要です。
感染症拡大への対策としてプラスチックが役立っている現場もある一方で、不必要な排出は1人1人の努力で減らすことが可能です。
例えば、1つのプラスチックごみを海辺で拾うだけでも、何千という海のマイクロプラスチックを減らすことに繋がります。日本の海を、世界の海を、そして地球をきれいにしていきましょう。