海上保安庁の有資格者採用に社会人から挑戦する方法

海上保安庁の有資格者試験とは?社会人から海上保安官になれる?またその仕事内容は?

このような疑問にお答えする記事となっています。

✅本記事の内容
・海上保安庁の有資格者採用について
・海上保安庁の有資格者採用試験について
・有資格者を目指す人が知っておきたい海上保安庁の仕事

・海上保安庁の有資格者採用後の悩み

社会人になってから海上保安官を目指す方に向けて、有資格者採用や採用後の仕事内容について解説していきます。

島国日本に海から貢献したいという方は、最後まで目をとおしてみてください。

海上保安庁の有資格者採用について

海上保安庁の有資格者採用

まずは採用方法についてです。

海上保安官の採用について

海上保安庁で勤務する海上保安官になるための一般的なルートは、大卒までの年齢に限られています。

参考までに、海上保安官の一般的なキャリアの入り口は次の2つです。

  • 幹部候補の教育機関である「海上保安大学校」(24歳未満)
  • 専門職員の育成機関である「海上保安学校」(21歳未満)

令和2年度に「海上保安大学校」は大卒者を対象としたコースを新設。「海上保安学校」は少子化対策として受験可能期間の拡大が決定しています。

しかし、社会人から海上保安官を目指すことも可能です。

それが本記事でご紹介する海上保安官(有資格者)採用試験となります。

海上保安庁の有資格者採用試験

下表の資格を保有している人は、中途からでも海上保安官を目指すことが可能です。

社会人からでも『船艇職員・無線従事者・航空機職員』としての有資格者採用試験を受けることができます。

試験区分受験資格
航海五級海技士(航海)以上
機関五級海技士(機関)以上
通信・技術・一級又は二級総合無線通信士
・一級、二級又は第三級海上無線通信士
・一級又は二級陸上無線技術士
いずれかの資格を有すること。
飛行事業用操縦士の資格以上の技能証明書
第一種航空身体検査証明書
航空無線通信士
整備航空整備士又は航空運航整備士
航空通信航空無線通信士又は第一級、第二級総合無線通信士
海上保安庁ホームページ 海上保安官(有資格者)採用試験より

海上保安官として求められる資質

求められる資質としては、一般的な仕事以上の「リーダーシップ」「協調性」「強い精神力」「強靭な体」があります。

というのも、捜索救助や災害対応などの危機的な状況を解決するためには、リーダーシップだけでなくチームや他部署などと連携して仕事にあたるための協調性のほか、厳しい現場の仕事に耐えることのできる体力や冷静に行動できる精神力が必須だからです。

有資格者試験採用者の募集要項

海上保安学校(門司分校)<有資格者>」のページから最新の募集要項を確認することができます。

詳しくは海上保安官募集の公式ページ下部の『資格を活かして海上保安官になる』に貼られているリンク「海上保安学校受験案内(門司分校)<有資格者>受験案内」を確認しましょう。

海上保安庁有資格者試験の倍率

参考として、有資格者の合格倍率については採用状況」のページに記載があり、現在発表されている最新の2019年度(第2回)の合格率は下表のとおりとなっています。

受験者数採用者数合格率
航海15640.0%
機関8337.5%
通信・技術27725.9%
飛行22313.6%
整備6350.0%
航空通信13538.5%

有資格者を目指す人が知っておきたい海上保安庁の仕事

海上保安庁の仕事

海上保安庁の有資格者試験を目指している人なら、既にご存じかもしれませんが、海上保安庁の業務概要についてもご紹介しておきます。

海上保安官の業務内容

海上保安庁に所属する海上保安官は、巡視船や航空機を使用して、日本の海域を監視し、海の治安と安全を守る国家公務員です。

中国船の領海侵犯など日本周辺海域を取り巻く状況の厳しさ、そして近年は多くの災害発生時における救助任務などにより、その役割はますます重要となっています

次の5つの使命が業務の基礎として挙げられているものです。

  1. 治安の維持
  2. 海上交通の安全確保
  3. 海難の救助
  4. 海上防災・海洋環境保全
  5. 国内外機関との連携・協力

職種は大きく2つに分かれており、主に海上で勤務する船員と、空から海上の保安を担う航空要員です。

勤務地は陸上勤務海上勤務に分かれており、海上勤務では手当はつきますが休日は不規則なものとなります。

海上の業務

船の最高責任者である船長の下、次の業務を行います。

  • 船長を補佐しつつ業務計画を立案:「業務監理官」
  • 操船や見張りといった船の運航:「航海科職員」
  • 通信機器の保守運用:「通信科職員」
  • 船体設備の整備;「機関科職員」

「海猿」の映画、動画、マンガで有名になった救難業務に従事するのは、「潜水士」です。羽田航空基地内にある特殊救難隊は極めて高度な技術、知識、体力が必要となります。

陸上の業務

海上保安庁および全国に11か所ある管区本部において、次の業務を行います。

・広報や職員人事、福利厚生
・予算執行から施設・物品などの管理
・情報通信システムの管理や情報管理
・海上犯罪の捜査や海難救助に関する業務等
・海洋調査により得られた情報を、海図や船舶に対する航行警報、科学的データ等の形で提供
・海上交通ルールの設定など
・海上における犯罪に対し、科学的な手法で事件を解明する

空の業務

全国の基地に配備されているヘリコプターや飛行機について、次の業務を行います。

  • パイロット業務:「飛行科職員」
  • 機体整備や燃料管理など:「整備科職員」
  • 通信機器の整備や航空機、基地、巡視船との相互通信業務:「通信科職員」

給与

海上保安官は、公安職にあたるため事務員と比較して12%ほど高い給与が支払われます。また、海上勤務の場合にはプラスの手当が支給されます。

平均年収は42歳で約690万円と発表されています。

勤務体系

海上保安官は配属場所によって勤務体系が大きく変わります。

海上勤務
24時間シフトを組んで海上パトロール業務を行っており休日はありません。航海日数は、10日~2週間となります。

陸上の勤務
9:00~18:00といった比較的規則正しい勤務となります。

空の勤務
航空基地配属もシフト対応のため、勤務時間は不定期になります。また、緊急時は休日でも出動する場合があります。

福利厚生

福利厚生は次のとおりです。

  • 全国の国家公務員合同宿舎か、海上保安庁職員宿舎を借りることができる
  • 定期健康管理や、病気・負傷の場合の給付制度
  • 急な支出に対しての貸付制度、など

海上保安庁と海上自衛隊の違い

  • 海上自衛隊の任務は、武力攻撃から国を防衛することが主な任務であり、必要に応じて公共の秩序の維持(災害時の対応など)にあたる。
  • 海上保安庁は、治安の維持、海上交通の安全確保、海難の救助、海上防災・海洋環境の保全を使命としている。

海難救助や治安の維持は、海上保安庁が対応しますが、海上保安庁で対応できない場合には海上自衛隊が対応します。

近年の不審船・テロ対応などにおいては、緊密な連携をとっています。

海上保安庁の有資格者採用後の悩みについて

海上保安庁の有資格者採用後の悩みについて

最後に、海上保安庁の有資格者試験採用後の悩みについて、ご紹介して終わります。

辞めた場合の転職先について

私の知る限りでは、営業職や他の公船、海事業界の外資系企業の重役となったケースがあります。

保安官として海洋観測業務に就いていた場合は、JAMSTECなどの研究航海で技術支援をしている観測技術員も転職先として考えられます。

特に、海洋無人観測艇(WaveGlider)の国内メインユーザーは、保安庁とJAMSTECであり、知見を有していれば活かすことができます。

無人観測艇を含む自動運航船については下記の記事にまとめています。

また海の仕事については次の記事で紹介していますのでご参考になさってください。

海上保安官としての副業は、公務員であり限られてしまいます。しかし辞めた後ならブログアフィリエイトなどの公益性の低い事業でも取り組むことが可能となります。

実際に当サイトでも副業として収入を得ることができています。

海上保安庁有資格者採用後のワークライフバランスについて

勤務体系が不規則で相手と予定を合わせづらい、呼び出しに備えて本部より30分で戻れるところまでしか出かけられない、そもそも出会う機会が少ない、危険な仕事に従事している時に心配される、転勤が多い、守秘義務もあり勤務中は連絡がとりづらい、といった意見が多くあります。実際、未婚の方も多いようです。

しかし国家公務員であり年収が安定していること、真面目なイメージにより婚活サイトにおいて人気の職業となっています。

海上保安官の現状と将来性

尖閣諸島などの領土問題をめぐった近隣諸国との緊張感の高まり、国際犯罪組織による麻薬や覚せい剤などの密輸もあり、海上保安官の重要性はますます高くなっています。2020年度の予算は過去最高となっており、領海警備の中核を担う大型巡視船の23年度までの6隻増強、新型ジェット機、中型ヘリコプターの配備を進めています。

海難事故への対応、海の安全確保、海洋資源の開発・利用を目的とした海洋調査といった任務も海上保安官の任務であり、今後ますますの活躍が期待されています。

海上保安庁の有資格者試験なら社会人からでも挑戦可能

社会人でも有資格者試験なら海上保安庁を目指せる

海上保安庁の有資格者採用と、仕事内容についてご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか?

既に社会人で、下記の資格を持っている方のキャリアパスの参考になれば幸いです。

試験区分受験資格
航海五級海技士(航海)以上
機関五級海技士(機関)以上
通信・技術・一級又は二級総合無線通信士
・一級、二級又は第三級海上無線通信士
・一級又は二級陸上無線技術士
いずれかの資格を有すること。
飛行事業用操縦士の資格以上の技能証明書
第一種航空身体検査証明書
航空無線通信士
整備航空整備士又は航空運航整備士
航空通信航空無線通信士又は第一級、第二級総合無線通信士
海上保安庁ホームページ 海上保安官(有資格者)採用試験より

※社会人から船舶免許の取得を目指す方は下記の記事も参考になさってください。

尖閣諸島周辺海域をはじめとした我が国を取り巻く情勢、巡視船等の体制強化、新たな採用制度の創設など、海上保安庁の「今」については、下記の方を参考になさってください。